2012年5月3日木曜日

Biodiesel(バイオディーゼル;BDF)用Dry‐Process方式と使用メディアについて - Joe.H のECO活動 - Yahoo!ブログ


Biodiesel(バイオディーゼルBDF)の精製工程の簡素化、スピードアップ化(効率性)、それに何より環境に優しいECOの観点から、従来の水洗法からDry−Process(日本では乾式法?)に、世界の主流は、この2〜3年でほぼ完全に、特に大規模、商業生産では、この方式に移行しています。

 

商業生産で利用されていた方式、それに使われていた処理材料(メディア)が、最近は日本を含め小規模生産や個人規模のBDF生産でも採用され始めていると言う状況です。

 

では、

Biodiesel(バイオディーゼル;BDF)のDry−Process法では、どの様なメディアが使われ、どの様な方式があるかご存知でしょうか??

 

まずDry−Processの目的は何でしょうか?

粗製BDFから、主に残留石鹸分、残留グリセリン、残留メタノールの除去等が主目的です。

 

これまでも、上記の目的を達成する為に、BDFの処理方式は水洗浄以外に、(原料の前処理や酸触媒方式などで、石鹸分の生成を抑えて)遠心分離機を用いる方法、(ガム質,SGなどと併せて除去する目的で)活性炭、活性白土、珪藻土、シリカゲル、ゼオライトなどの吸着剤を用いる方法や、これらの組み合わせ法などありました(我々の装置メーカーは前記2種類のミックスが標準でした)。

でも、現在、海外の商業生産では、殆ど使用されていません。

 

では、何を使用しているのでしょうか??

日本では、最近イオン交換樹脂によるDry−Processが使われ始めましたが、。。。

 

現在、(日本を除く)世界主流の殆どは、次の3タイプのメディアとその方式です。1)無機吸着剤(1社、D−Sol)、2)有機吸着剤(1社、ECO2Pure)、イオン交換樹脂(各メーカー有り)の3方式です。 では順に簡単に紹介しましょう。

 

1)D−Solは、Magunesium Silicateの微粉末で、商標ではMagnesol D−Solと呼ばれ、米国(ダラス)の化学会社が販売している製品です(類似品で、製品SELLECT有り)。

組成的には、上記シリカゲルやゼオライトなどの物質と大差ないのですが(多分、天然の無機化合物を熱・化学処理したもの)、特にBiodiesel用に製造されているのが特徴です。上記3方式の最初に紹介された方法で、5〜6年前から使われています。


キャノンフォールズ設計家の中西部

【使用法】:粗製BDFに対して、0.5〜2.0%(標準1.0)の粉末を混ぜ、攪拌して、後はフィルターで粉末を除去すれば終わりと言う方法です。必用な設備は攪拌層とフィルター設備などです。商業的には、フィルターの代わりに遠心分離機を使う例が多い様です。

 

【メディア・コスト】:390円/Kg(現地少量小売価格、別と送料など、以下同じ)、1000L処理当り、標準で9kg(重量で1%)なので、3500円程度。使用済メディアは廃棄処理、土と大差なく、天然由来のものだと思いますので、特に問題なさそうです。

 

【問題点】:除去性能的には優れている様ですが、少量生産では、吸着済D−SOL微粉末を完全に除去するのが難しい様です。

通常のフィルターでは、一部微粉末が除去できないし、一部ではエンジントラブルになるとも言われています。

当初検討しましたが、止めた経緯があります。

 

2)吸着剤(ECO2Pure)は、イギリスのBiodiesel関連(商)社が販売しているもので、これは彼らの商標であり、商品ですが、中身はセルロース系メディア+に過ぎません(下記写真)。この会社は、以前イギリスでD−Solの販売代理店をしていました(今も)が、現在は主力はこちらへ移しています。

【使用法】:充填塔にこのメディアを入れ、その後は粗製BDFを流すだけで、使用後は燃焼できます。多くのイオン交換樹脂の様に、Wet−Typeに必用な)前処理や吸着グリセリン除去等が不要で、使えなくなれば、即交換すればよく、操作が簡単と言うことで、この3〜4年前から(小規模では、2年程前から)、あちこちで使われ始めています。

簡単で、単位容積あたりの処理流量が多いので、充填塔も小型化できます。

 

【メディア・コスト】:750円/Kg,1kg当り350〜700L程度処理できますので、1000L処理換算では1100〜2200円程度となります。

【問題点】:粗製BDF中の石鹸分は、1000PPM以下が必用です。2000〜3000PPMの生BDFだと直ぐヘタリます。

 

石鹸分やグリセリリン分を完全に除去できないので、最近やや落ち目です。

実例では、石鹸分640PPMは60PPMまでしか低下できていません。これでは、BDF製品規格にもう一寸ですが達してません。

イオン交換樹脂等、他の処理法との組み合わせが、このメディアが今後生きる道の様です。

 


どこに貼るのプラカードに

3)イオン交換樹脂は、水処理や原子力工業など使用実績が多く、微量の金属分やCa分等を除去する為に用いられてきました。これをBDF精製メディアとしてカスタマイズしたものが用いられています。

水処理などでは、日本製のオルガノなどが有名ですが、BDF処理用は存在しません。海外では、米国(3社)、ドイツ(1社)、インド(1社)等が、この業界では有名です。製造元が多い為か(イギリスも有り、BioLite等)、最も使用例が多い。

イオン交換樹脂は、その名前の通り樹脂メディア側のイオンとBDF側の不純物のイオンとを交換するもので、除外したり、物理化学的に吸着は多くはありません(例外、GF202,Thermax)。

イオン交換樹脂には、プラス(+)イオンとマイナス(ー)イオン交換樹脂が一般にはありますが、BDF中の除去対象は、プラスイオン交換機能だけで、石鹸分の+イオンの金属石鹸分(触媒のNa,又はK)を樹脂の水素(H+)イオンと交換します。

【使用法】:残留グリセリンも除去できますが、この除去量は極くわずかで、特にマクロ孔構造のイオン交換樹脂でないと多くは望めませんが、殆どの製品はマクロ構造のない均一細孔構造の交換樹脂です。また使用前に前処理の必要のないDry−Typeと必用なWet−Typeがあります(GF202)。

 

写真は、米国製のBDF用細孔構造(Dry−Type)のPuroLiteという製品です。

その他に、メタノールも除去できると一部業者は宣伝していますが、殆ど除去できません。

イオン交換時にメタノールが1〜2%含まれていた方が、樹脂内への拡散・交換性能を発揮します。従って、メタノール除去をDry-process処理後に脱メタノール処理を標準としている例が多いです(細孔タイプ)。

装置としては、充填塔が用いられますが、流量管理が重要であること、細孔内での拡散・吸着を充分行うためには充填塔の長さ(L)/内径(D)比を充分摂るること等が重要です。また、温度管理も必要です。

大多数の人は、、自らイオン交換用の充填塔を設計される事はないと思いますが、設計する場合、既存容器を転用する場合は、考慮点や注意事項があります。特にイオン交換樹脂は使用に際し、時間経過と伴に、1.5〜2.0倍に膨らみますので、必用な容器の大きさの確保が必要です(例外、GF202)。


スーフォールズ、サウスダコタ州可能ジョブ

つまり10Lのメディアを使う場合は、通常20Lの容器が必用ということで、最低でも塔長(L)/塔内径(D)=3〜5以上を確保し、塔内処理スピードは、3BV/Hr(Bed-Volume)程度以内とする必要があります(詳細は樹脂メーカーの仕様に従うのが原則です)。

 

【メディア・コスト】:1000〜1900円/Kgで、1Kgのイオン交換樹脂(使用中のもの)で、(1000PPM程度の石鹸 分で)850L程度処理できると言われていますので、1000L換算では、1200〜2200円程度となります。

但し、イオン交換樹脂は、再生が可能ですのです(正しくは、グリセリン吸着機能の脱着再生)。交換樹脂の5〜10倍のメタノール洗浄で、吸着グリセリンは簡単に除去できます。再生の度に、イオン交換能力は多少低下する様ですが、数回はグリセリン洗浄が可能と言うことですので、、例えば、3回行えば、コストはほぼ3分の1の350〜650円程度となります。

このメタノール洗浄では、グリセリン除去洗浄は可能ですが、吸着した金属イオン(Na、K)の再生も、希硫酸や塩酸で可能です。この場合は、更にコストは低下します。

 

【問題点】:構造上から処理速度が遅い点と、大量の石鹸分やグリセリン除去はできないことです。但し、イオン交換樹脂は、そのメカニズムから、極微量の石鹸分(アルカリ金属)の除去機能は優れていますので、最近のBest−Practice法は、前段の吸着剤+後段のイオン交換樹脂と言う組み合わせと言えます。

使用済のイオン交換樹脂の処理方ですが、メーカーのMEDSによれば、化学合成されたプラスティク類と同じ、燃焼廃棄可能と言うことですが、量が多ければ、メーカーは前述再生処理をして、再使用しているということです。プラスティクスですから、寿命はありますが、かなり長期の使用に耐えます。

 

以上、今回は粗製BDFの精製処理法のDryーProcessのメディアとその処理法について、紹介しました。

前回の記事ではBDFのLCA(Life−Cycle Assessment)を紹介しましたが、LCAの観点からも、また処理時間や設備・処理時間の観点からも、更にECO的な観点や約1年半の使用経験からもDry−Process法は、現状ではベストな方法だと思います。

 

何かLCAの観点から、Dry−Processは問題有り? の様なご意見も有る様ですが、定量的な数値は不明です。


勿論、大量の水洗処理水を公共下水やその他へ垂れ流すと言う前提で、この費用や設備費、処理時間や化学薬品などのコストを無視したら、話は変わってきますが、まじめに自己設備で完全に廃水処理をする苦労とその処理時間・コストは大変だと思います。。。。

但し、水洗処理によるBDF精製の経験がないもので、詳細はわかりません。

 

いずれにしても、Dry−Process法は最近の処理法の流行であることは間違いありません。

では、また。

Joe.H

 

追記)

 

・主なイオン交換樹脂

 +Amberlite BD10Dry  by Rohm and Hass Chemical Co.

 +PD206 made by Purolite, a subsidiary of 3M

 +Lewatit GF 202  by Lanxess(WetTye,膨張なし、吸着樹脂、日本は殆どGF202使用)

 +Tulsion T-45 BD  by Thermax(Macro)

 +DWR-10Dry by US OEM(LIKE PD206,最安レジン)

・SG(Sterol Glucosidesl )は、最近米国でBDF業界で話題の物質で、通常のフィルターでは取れない固形物質で、BDFがCP(Cloud Point)温度以上でも、結晶核存在⇒核成長⇒エンジンフィルター詰まりの原因物質であり、植物油にはこの元の物質が含まれている。この除去には、専用の吸着フィルター(写真,30万円程度)や珪藻土などが使われている(要30PPM以下に)。

ASTM D6751 Cold Soak Filtration test として、新規格が追加された。

 

追伸)

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以上

 



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